本当は怖い歯周病
今までは、歯周病は口の中だけの問題と考えられていました。しかし最近ではその影響は全身のいたるところに及ぶといわれるようになっています。
そもそも歯周病は、歯周病菌が歯と歯茎の境目に集まることからはじまります。そして歯周病菌が出す毒素によって歯茎が炎症を起こします。歯茎は毛細血管が豊富にあるため、炎症が起こると出血しやすくなるのです。
歯周病菌は、その毛細血管などから血管に入り込み、体全体へと巡っていくのです。血管以外でも歯周病菌がだ液などに溶け込むなどして、唾液を飲み込むことによって、歯周病菌が気管や肺、食道に流れ込むことが考えられます。
歯周病がリスクを高める疾患
歯周病の影響がリスクとなって、影響を与える可能性がある疾患は、主に次のようなものがあります。
心臓血管疾患
歯周病患者では、心筋梗塞や脳卒中などの心臓血管疾患を発症するリスクが高いことが指摘されています。
これは、歯周組織から分泌される炎症性サイトカインや歯周病原因菌の内毒素が入り、動脈硬化の進行に関与するためだと考えられています。2007年の報告では、歯周病治療後6カ月間は血管の拡張が進行したというレポートが発表され大変注目を集めています。
肺炎
高齢者、認知症、脳血管障害患者や、手術後などの状態では 嚥下(えんげ)反射と咳反射が低下して 歯周病原菌やその他の口腔内細菌が肺に入りやすく、誤嚥性肺炎を発症することがあります。
口腔衛生状態と誤嚥性肺炎には深い相関性があり、予防のためには、口腔内を清潔に保つことがとても大切です。寝たきりから死亡に至るほとんどのケースは、これら口腔内細菌が原因の誤嚥性肺炎と言われています。
糖尿病
歯周病は糖尿病の第6の合併症と言われ、糖尿病患者では歯周病の発症や進行のリスクが高いことがわかっています。これは、歯周組織においても、免疫機能の低下、代謝の異常、微小血管障害などが起こり、歯周病原菌に感染しやすく、組織の破壊が起こりやすくなるためだと考えられています。
また、最近では、歯周病も糖尿病へ影響を及ぼすと考えられるようになってきました。糖尿病患者の歯周病を治療することで血糖コントロールが改善し、血中HbA1c濃度がおよそ1%低下されるとの報告もあります。これは、歯周組織から分泌される炎症性サイトカインが抑制されて、インスリン抵抗性が改善されるためと考えられます。
早産・低体重児
重い歯周病に罹患した妊婦では早産による低体重児を出産するリスクが高くなるという報告があります。これは、歯周組織から分泌される炎症性サイトカインやプラスタグランジンが子宮の収縮を促進し、早産になりやすくするためだと考えられています。


